ストレスチェック制度導入には衛生委員会による調査審議が必要!代表的な審議項目を紹介

労働安全衛生法の改正に伴い、2015年12月より、一定以上の規模の事業場では全労働者に対してストレスチェックを実施することが義務づけられました。(※)

ストレスチェックは毎年1回実施しなければならないため、継続的かつ定期的に行うための体制を整える必要があります。あらかじめ事業所の衛生委員会でストレスチェック制度に関する話し合いを行い、適切なルールを設けることが大切です。

本記事では、ストレスチェックと衛生委員会の概要、ストレスチェックと衛生委員会の関係性、ストレスチェック制度を実施する流れについて解説します。

※参考:厚生労働省. 「労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令(概要)」. 

ストレスチェックとは、労働者のストレス状況を調べる検査のこと

ストレスに苦しむ労働者

ストレスチェックとは、労働者が抱えるストレス状況を調査する目的で実施される簡易的な検査のことです。

ストレスに関連する質問を記載した質問票を労働者に配布し、その回答を分析することで、当該労働者のストレス状況を調べられます。

質問票の様式に関しては、「①ストレスの原因に関する質問項目」「②ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目」「③労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目」が含まれていれば特に指定はありません。

一般的には国が推奨する 「職業性ストレス簡易調査票(57 項目)」※の質問票が利用されています。質問に対して「そうだ」「まあそうだ」「ややちがう」「ちがう」といった複数の選択肢を提示し、自身に一番近いと思ったものに丸を付けていく択一式で回答します。

※参考:職業性ストレス簡易調査票(57 項目)

ストレスチェックを実施する理由

ストレスチェックを実施する理由は大きく分けて3つあります。

<1. 法律で義務化されている>

2015年12月1日付で施行された労働安全衛生法の一部改正により、労働者の心理的な負担の程度を把握するための制度、いわゆるストレスチェック制度が新たに作られました。

これにより、常時使用する労働者が50人以上の事業所については、毎年1回、全労働者に対してストレスチェックを行うことが義務づけられました。(※)
参考:厚生労働省. 「ストレスチェック制度簡単!導入マニュアル」P2.

ストレスチェックや面接指導の実施状況は、労働安全衛生法第100条の規定の元、事業所を所轄する労働基準監督署長に報告する義務があります。(※)
参考:e-Gov法令検索. 「労働安全衛生法 第百条(報告等)」.

仮にストレスチェックを行わず、労働基準監督署長への報告も怠った場合は、労働安全衛生法第100条違反となり、同法第120条の規定により、50万円以下の罰金に処される可能性があります。(※)
参考:e-Gov法令検索. 「労働安全衛生法 第百二十条」. 

<2. 精神障害や過労死に至るメンタルヘルス不調の未然防止>

厚生労働省が発表した「令和4年度 過労死等の労災補償状況」によると、精神障害を原因とする労災の請求件数は2,683件、そのうち自殺(未遂も含む)の件数は183件に上っています。(※)
参考:厚生労働省. 「令和4年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」.

いずれも前年度比増となっており、精神障害の発生やそれに伴う過労死は重大な社会問題となっています。

ストレスチェックを実施することで、労働者自身の抱えるストレスや悩みに気付きを与えセルフケアを促す事が出来ます。併せて、ストレスチェックの集団分析結果を職場環境改善に繋げることで、メンタルヘルス不調や過労死のリスクを軽減する事できます。

<3. 仕事のパフォーマンス低下の防止>

精神障害や過労死までいかなくとも、慢性的にストレスを抱えていると仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼす原因となります。

慢性的なストレスは労働者本人も自覚がないケースが多いため、放っておくと仕事のパフォーマンスが著しく低下するおそれがあります。

ストレスチェックの集団分析結果によって客観的に労働者のストレス状況を把握し、然るべき措置を講じれば、仕事のパフォーマンスアップが期待できます。

衛生委員会とは、労働者の健康維持や安全確保を目的に設置される組織のこと

衛生委員会とは、労働者の健康リスクの防止や、健康づくりのための取り組みについて、調査審議し、評価することを目的に設置される組織のことです。

常時働く労働者の数が50人以上の事業所は、原則として衛生委員会を設ける義務があります。(※)
参考:厚生労働省. 「安全委員会、衛生委員会について教えてください。」. 

衛生委員会は、議長を兼任する総括安全衛生管理者を筆頭に、衛生管理者、産業医、衛生に関連する経験を持つ労働者で成り立っています。

衛生委員会の主な役割

労働安全衛生法第18条では、衛生委員会の役割について、以下の項目を調査審議させることと定めています。(※)

  • 労働者の健康障害を防ぐための措置に関する事項
  • 労働者の健康を保ち、推し進めるための措置に関する事項
  • 労働災害の原因調査および再発防止のための措置に関する事項
  • その他、労働者の健康リスクの防止や健康増進に関する事項

※参考:e-Gov法令検索. 「労働安全衛生法 第十八条(衛生委員会)」. 

事業者は、労働者が心身共に健やかな状態で仕事に従事できるよう取り計らう義務を負っているため、各事業所では独自の健康づくりのための対策を講じています。ただ、事業所のトップが一方的に考案した対策・措置では、労働者や現場の声が反映されていない可能性があります。

そこで、衛生委員会は自社の健康に関する取り組みの内容について調査・審議し、その内容が適切なものであるかどうか。労働者の意見が反映されたものであるかどうかを評価します。

衛生委員会による調査・審議により、労使一体となって健康づくりへの対策に取り組めるようになります。

ストレスチェック制度と衛生委員会の関係と、主な調査審議事項

ストレスチェック制度の複雑な周辺事情

ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止(一次予防)し、心の健康の保持増進を図ることが主な目的です。

労働者の健康づくりに関連する事項は衛生委員会による調査・審議の対象となるため、事業所がストレスチェック制度を導入する際は、衛生委員会による調査・審議を受ける必要があります。

衛生委員会でストレスチェック制度について話し合う際、主な議題となる項目には以下のようなものがあります。

ストレスチェックの実施者について

ストレスチェックの実施者は労働安全衛生法第66条の10によって以下の者と定められています。(※)

  1. 医師
  2. 保健師
  3. その他厚生労働省令で定める者

※参考:e-Gov法令検索. 「労働安全衛生法 第六十六条の十(心理的な負担の程度を把握するための検査等)」.  

3は厚生労働大臣指定の研修を修めた歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認審理心理士などがこれに該当します。一般的には、定期健診を依頼している医師や、自社専属の産業医などが実施するケースが多いようです。

ストレスチェックの実施時期

ストレスチェックは1年に1回、定期的に実施する必要があります。

実施するタイミングは事業所が任意で設定できますが、毎年バラバラの時期に行うと間隔が狭まったり、空いたりしてしまうので、あらかじめ時期を決めて実施するのが理想です。

なお、実施時期の決め方には二通りの方法があります。

ひとつは繁忙期に行うパターンです。一般的に、繁忙期は労働者のストレスが大きくなりやすい傾向にあり、心身に何らかの異常を来すリスクが高くなります。

あえて高ストレス期にチェックを行うことで、健康障害の発生を未然に防いだり、繁忙期が労働者の心に与える影響を調査できます。ただし、繁忙期にストレスチェックを行うと、多忙故に受検者が減ってしまう可能性がある点には注意が必要です。

もうひとつは閑散期に行うケースです。業務が落ち着いたタイミングで実施すれば、ストレスチェックを受ける労働者の数が増え、制度の効果を発揮されやすくなります。

ただ、閑散期はストレスが低くなりやすいので、繁忙期に抱くストレスを見逃しやすいところが欠点です。

以上の点を踏まえ、衛生委員会では適切なタイミングでストレスチェックが実施されるかどうか、審議する必要があります。

どのような質問票を使うのか

冒頭でも少し触れましたが、ストレスチェックで使用する質問票の内容は、以下の種類の質問が含まれていれば、事業所が任意で設定することが可能です。(※)

  • ストレスの原因
  • ストレスを原因とする心身の自覚症状
  • まわりからのサポート

一から質問票を考えるのが難しい場合は、国が推奨している質問票を利用するのがおすすめです。上記3つの区分ごとに、合計57の質問が設定されています。(※)
参考:厚生労働省. 「ストレスチェック制度簡単!導入マニュアル」P5-6.

質問票は用紙で配布してもよいですが、オンライン上で実施することも可能です。労働者の年齢層や職場の環境などを鑑み、なるべく受検率が上がる方法を模索しましょう。

ストレスの高い人を選ぶ方法

ストレスチェックに基づいて、ストレスの高い人(高ストレス者)を選ぶ方法には、合計点数を使用する方法と、素点換算表を使う方法の2パターンがあります。

手軽に計算できるのは前者ですが、後者は質問数の影響に捕らわれず、尺度ごとの評価を出せるところが特徴です。

どちらの方法が自社や労働者に適した方法なのか、衛生委員会で審議を行います。

面接指導の申出方法、実施者の選択

高いストレスを抱えていると診断された労働者には、高ストレス者であることを通知した上で、必要に応じて面接指導を実施します。面接指導を受けるか否かは任意なので、労働者が希望した場合の申し出方法を決めておくことが必要です。

なるべく労働者のプライバシーを保護できる方法を選択しなければならないため、事業所が提示した方法が適切であるかどうかを審議します。

また、面接指導を誰が行うのかについて調査審議するのも衛生委員会の仕事です。

高ストレス者の面接指導を行えるのは医師のみと決められているため、あらかじめ適任の医師に依頼しておく必要があります。産業医が選任されている場合は産業医に面談を実施してもらいましょう。

集団分析の実施方法

集団分析とは、部署や部門ごとにストレスチェックの結果を集計・分析する方法のことです。集団分析を実施すると、どの部署・部門でストレスが高くなりやすいか、などの情報を把握しやすくなります。

集団分析を実施する場合は、どの単位(部署・部門・チームなど)で集計・分析するのかなど、細かなルールを設定しておくことが必要です。

ストレスチェックの結果の保管者、保存場所

ストレスチェックの結果は事業所には返却されず、労働者本人のみに通知されることになっています。

そのため、結果は医師などの検査実施者またはその補助を行う者(実施事務従事者)が保管しなければなりません。

保存場所については任意で決められるため、事業社内に保存することも可能です。ただしその場合、検査実施者やその従事者以外の人間が内容を閲覧できないよう、施錠をしたり、パスワードの管理を行ったりすることが必要です。

保存者および保存方法が適切かどうかを検討するのも、衛生委員会の調査審議項目に含まれます。

ストレスチェックにおける衛生委員会の役割をよく理解しておこう

労働者が50人以上いる事業所では、毎年1回以上のストレスチェックを行うことが法律で義務づけられています。

ストレスチェックの内容や実施方法に関しては、会社に設置された衛生委員会によって調査審議し、労働者にとって適切な内容・方法であるかどうかを話し合うことが必要です。衛生委員会で話し合う項目は多岐に亘るため、委員会の役割をよく理解した上で、何について話し合うべきなのか決めておくことが大切です。

ストレスチェックそのものにも医師の関わりが必要不可欠なので、ストレスチェック制度の対象となった場合は適任の産業医を探しましょう。

株式会社メディカルトラストでは、労働者の健康管理や職場環境の改善に貢献する産業医の紹介サービスを行っています。

事業所にヒアリングした上で、適任とされる産業医を紹介できるので、ストレスチェック制度導入にあたって産業医をお探しの方は、ぜひメディカルトラストにご相談ください。

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株式会社メディカルトラストは、1,000事業所以上の産業医選任・50名以下の小規模事業場の支援を含めると2,000以上の事業場に選ばれ、業歴20年以上の経験と実績で、幅広く産業保健のサポートをしています。

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株式会社メディカルトラスト 編集部

執筆者株式会社メディカルトラスト 編集部
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2001年から産業医、産業保健に特化して事業を展開。官公庁、上場企業など1,000事業場を超える産業医選任実績があります。また、主に全国医師面談サービスの対象となる、50名未満の小規模事業場を含めると2,000事業場以上の産業保健業務を支援。産業医は勿論、保健師、看護師、社会保険労務士、衛生管理者など有資格者多数在籍。

20以上の業歴による経験を活かし現場に寄り添い、

最適な産業医をご紹介・サポートいたします

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