高尿酸血症は、尿酸の血中濃度が異常に高まった状態で、尿路結石や痛風発作、さらには動脈硬化のリスクを高める恐れもあります。
2020年には、コロナ禍でステイホームやテレワークが普及し、尿酸値が高めの人が増えたとする報告もあります。
高尿酸血症は、生活習慣病の初期の段階で出る異常の一つでもあります。
今回は、高尿酸血症の原因や対策について解説していきます。
目次
高尿酸血症とは?どんなリスクがある?
高尿酸血症とは、尿酸の血中濃度が異常に高まった状態のことを指します。
(1)高尿酸血症とは
人間の体の中では、新陳代謝によって細胞が分解されたりエネルギーを使うと、プリン体が作られ尿酸に代謝されます。
尿酸が過剰に産生されたり、尿中への排泄力が低下したりすることによってバランスが崩れ、血中濃度が異常に高まってしまう状態が高尿酸血症です。
血液中の尿酸値が7mg/dl以上になると高尿酸血症と診断されます。
高尿酸血症の合併症として、痛風や腎結石、尿路結石の原因であるほか、高尿酸血症がある人では、肥満や高血圧、脂質異常症、高血糖を複合的に合併することが多くなります。
そのため、たかが採血の異常だと軽視せず、予防や対策をとることが大切と言えるでしょう。
では、日本ではどれくらいの人が高尿酸血症なのでしょうか。
高尿酸血症の合併症として多く見られる、痛風の患者数からその疫学を見ていきましょう。
国民生活基礎調査によれば、1986年以降の30年間で日本の痛風患者数は約4倍、男性に限れば約5倍の増加とされています。
また、年齢別の痛風による通院者率も、2013年と2016年の国民生活基礎調査では報告されており、両年とも男性では60歳代後半から70歳代にかけて最も高いという結果でした。
いずれの年代でも、女性より男性の方が多くなっています。
女性ホルモンには腎臓からの尿酸の排泄を促す作用があるため、明らかな性差が認められ患者さんの大半が男性となるのです。
(2)新しい高尿酸血症の分類は?
高尿酸血症の病型分類を簡単にご紹介します。
以前は、尿酸を作りすぎる「産生過剰型」、尿中に尿酸を排泄する能力が落ちた「排泄低下型」、その「混合型」に分類されていました。
しかし、2020年に、新しいガイドラインが作成され、以前の分類に加えて、便への尿酸排泄が低下した、「腎外排泄低下型」が追加されました。
血液検査や、尿の検査などを行い、どのタイプなのかを調べた上で、治療方針を決めていくことになります。
コロナ禍で尿酸値高めの方が増えた?手軽にできる対策もある?
高尿酸血症においても、コロナ禍でのテレワークが影響を与えているという調査結果があります。
(1)テレワークにより尿酸値が高くなった人も?
日本生活習慣病予防協会は、COVID-19の自粛生活における実態を調査するため、実際に痛風や高尿酸血症の診療を行った医師を対象にしてアンケート調査を行いました。
その結果、「受診控え」があったと思われた期間(4月〜7月)中でも高尿酸血症・痛風の増加傾向がある、という意見が得られたということです。
調査に回答した医師の意見としては、自粛生活による運動不足、食事の偏り、ストレス、アルコール摂取量の増加を訴える患者さんの増加を実感しているとの意見が多くみられたようです。
(2)高尿酸血症の治療とは?
では、尿酸値が高い場合には、どのような治療が行われるのでしょうか。
痛風関節炎または痛風結節がある場合、生活習慣の改善と、薬物治療が行われます。
生活習慣を見直し、血液中の尿酸値を正常値に近づけるようにするのです。
一方、症状がない場合でも、腎障害や尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの合併症がある場合は、血清尿酸値8mg/dl以上から生活習慣修正と薬物治療の開始が考慮されます。
生活習慣の改善方法としては、以下のようなものがあります。
-1 肥満にならないようにする
まずは肥満のある人は肥満を改善し、肥満のない人は肥満の予防のために食べ過ぎないようにします。
肥満は体内でのプリン体の合成を促進し、食べすぎによりプリン体の摂取増につながりますし、尿酸の排泄低下を招きます。
-2 プリン体の摂取制限をする
お肉や、動物の内臓や肉汁にはプリン体が多く含まれているので、取りすぎないようにします。
具体的には、鶏や豚、牛レバー、干物、白子などにはプリン体が多く含まれています。下記の表で食品中のプリン体量をお示ししますので、参考にしてみてください。
-3 アルコールをとりすぎないようにする
飲酒習慣のある人は節酒および禁酒が必要となります。
アルコール飲料には、尿酸の排泄を抑制する効果があり、あわせておつまみとして動物性食品の摂取が多くなることで、プリン体の摂取量が増えます。
さらには、飲酒によって食欲が増し、肥満へとつながりやすくなりますので、適正量の飲酒を守ることが必要です。
1日の目安量としては、日本酒1合、ビール500mL、ウイスキーダブル1杯(60mL)までとします。
そして、週に2日以上を禁酒日とします。
-4 水を飲んで尿量をたくさん出す
飲む水の量を多くして尿量を増やすことで、尿酸の排泄を助けます。
飲水量は、1日2L以上の尿量を保つ量が目安となります。
糖分の多いジュース・牛乳・アルコール飲料を水代わりに飲むことは効果が乏しいでしょう。
生活習慣改善を測っても、なかなか尿酸値の低下が見られない場合は、薬を使った治療が行われます。*10
先述のように、高尿酸血症には3つの分類があります。
尿酸を作りすぎる「産生過剰型」と、便への尿酸の排泄が低下する「腎外排泄低下型」は、ともに尿への尿酸の排泄が多くなります。
これらのタイプに対しては、尿酸生成を抑える薬が用いられます。
一方、尿への排泄が低下している「尿酸排泄低下型」では、尿酸排泄を促す作用のあるお薬を使っていきます。
職域でも高尿酸血症に気をつけるべき理由
ここまで高尿酸血症について述べてきましたが、改めて、職域でも高尿酸血症に気をつけるべき理由について解説していきます。
(1)タイプA行動型(A型性格)は高尿酸血症になりやすい?
タイプA行動型(A型性格)という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
このタイプは、「時間的焦燥感をもって、精力的に行動し、他者への競争意識が強い」という人たちのことです。
このタイプの人たちは、ざっくりと説明すると、せっかちで、頑張り屋で、負けず嫌い、という性格です。
仕事に熱中すれば、成果を上げやすい人たちとも言えるでしょう。
職場にとっても、重要なポジションにいることもある人たちだと思います。
しかし、このようなタイプは高尿酸血症になりやすいことが明らかになっています。
こうした頑張り屋な性格の人がなりやすい傾向があるということで、企業としても関心を持つべき問題だと考えます。
(2)尿酸値異常は健康診断で早い段階からわかる生活習慣病のシグナル
尿酸値の異常は、生活習慣病である脂質異常や、高血圧、血糖値の異常よりも早い段階から出てくるということもあります。
そのため、職員の生活習慣病を予防するうえで、尿酸値に注意しておくことも対策の一つとなるでしょう。
注意点としては、職域の一般的な定期健康診断では、尿酸値は法定項目ではないということがあげられます。
一般的には尿酸値は、人間ドックで測定することが多い項目です。
お酒を飲むのが好きだったり、肥満傾向にある人に対しては、人間ドック等で尿酸値を測ることを職場として推奨するのも良いでしょう。