今回は、全国で初めて上工下水の水道事業を官民連携で一体的に運営する所謂「みやぎ型管理運営方式」の運営母体である株式会社みずむすびサービスみやぎの葛本様にお話を伺いました。
—————–貴社の会社・事業場の概要のご紹介をお願いします。
株式会社みずむすびサービスみやぎは、10社の企業が出資して2021年5月に設立されました。2022年4月より「みやぎ型管理運営方式」として、全国で初めて上工下水の水道事業を一体的に官民が連携して実施しています。これまで県が運営していた上水、工水、下水事業施設の運転維持管理を行っています。
—————–メディカルトラストに産業医選任のお話をいただいたきっかけは何でしたでしょうか。
設立当時、産業医が必要な事業場が1か所ありましたので、それをきっかけに産業医の選任をお願いしました。また、本社従業員は50人に満たないのですが、会社全体で250人以上の従業員が勤務しておりますので、本社にも産業医を置いた方が良いと考え、本社も含めて2か所の事業場を対象に同じ産業医の先生に来ていただいています。産業医の先生とはコミュニケーションも取りやすく、話もよく聞いていただけますし、また、的確なアドバイスもいただけますので大変助かっています。
—————–産業医が入ったことで産業保健体制が構築された実感はありますか。
そうですね、まず私自身がこれまで公務員だったので、企業における安全衛生に関する取り組みの経験がありませんでした。産業医との関わりや安全衛生委員会等を通じて、社内・社外問わず皆様から知恵をいただきながら産業保健体制の構築に取り組みました。例えば、従業員の休職や復職にあたり、どのように対応すべきか等、判断に迷うこともありましたが、産業医の先生やメディカルトラストの中島さんと相談し、円滑に対応を進めることができましたので非常に助かりました。特に復職時には一人ひとり業務上配慮すべき事項が違いますので、産業医の先生に意見をいただくことで具体的に検討することができたと実感しています。
また、安全衛生委員会等の場を通じて、「安全衛生とウェルビーイングは常に最優先事項である」との会社の方針について発信することにより、この方針について従業員に意識してもらえるよう努めています。労働災害ゼロを目指し、従業員の健康を保持増進していくことに加えて、精神的にも社会的にも充実していくことを目指しています。
—————–今のお話にあった「目指している理想の形」に向けて具体的に取り組み始めていることはありますか。
困った時にも相談しやすい環境づくりを目標に、社内でコミュニケーションを取りやすい雰囲気づくりを進めています。身近なところですと、職場環境の改善について各職場でグループ討議を実施して、自分たちの職場環境は自分たちで向上させるという意識を持てるように取り組んでいます。職場内でのコミュニケーションの活発化の一助になったものと考えています。
業務以外でも気軽にコミュニケーションをとれる場をと、最近では野球サークルやフットサルサークルを従業員の有志が自主的に発足させ活動しています。他にも昼休憩の時間を使って、近くの公園まで歩いていって、ヘルシーな昼食をみんなで食べて歩いて帰ってくるというミニピクニック等も不定期ながら実施しています。
ちょっとしたイベントを各事業場で行って、それをきっかけに社内コミュニケーションが取りやすい雰囲気ができることを目指しています。
—————–コミュニケーションをとるための雰囲気づくりは大切ですよね。
—————–産業医がいない拠点ではどのようなことをされているのでしょうか。特に本社と複数事業場の連携を取るのが難しいという課題を持たれている企業も多いので、その面で意識されている取り組みなどあれば教えてください。
産業医の選任義務のない事業場については、各事業場の代表者が本社の安全衛生委員会に参加して、本社の安全衛生に関する取り組みを共有するとともに、各事業場の実施事項や計画について報告をしてもらっています。本社の産業医と安全衛生委員会のメンバーに各事業場の状況も共有することで、必要に応じて連携して対応しています。
やはり現場によっては担当者の産業保健活動の経験にも差異があるので、状況によっては助言をしたり、気軽に質問できる場を提供し、お互いに知識と経験を蓄積していければ良いと思っています。
—————–これからより産業保健体制を手厚くしていきたい部分や、少し課題になっていると感じる部分はありますか。
健康診断の後に産業医の先生に就業判定をしてもらっていますが、そこで受診勧奨があった従業員の受診率が十分ではないところが課題であると感じています。医療機関の受診率を上げて、自分の健康に関心を持ってもらい、より良い健康状態で過ごしてもらえればと思っていますので、そこはまだ十分ではないと感じています。ぜひ何かいい知恵があれば教えていただきたいです。こういう取り組みで受診率が向上した事例があるとかですね。
—————–医療機関の受診は強制できない部分でもありますので、難しさを感じている企業担当者様は多いと思います。私見になりますが、健康教育などを行い従業員の健康リテラシーを高めることとで、受診に向かいやすい環境ができるかと思います。健康教育という点ではいかがでしょうか?
全従業員への情報発信というところでは、月に2回健康ニュースを出しているくらいなので、もう少し何か身近なところの情報発信があればいいのかもしれません。
他には、全従業員を対象に健康セミナーを実施して、良質な睡眠について学んでもらいました。また、責任者や管理職など部下を持っている人を対象にラインケア研修も開催しました。ラインケア研修については、現場の責任者の方々が知識を持つことで良好なコミュニケーションの方法を知り、現場で活用できることを狙いに先日実施したばかりです。
この辺りはグループ会社全体で取り組んでいることでもあるので、引き続き活用していきたいと思っています。
—————–今後、メディカルトラストに期待するようなことはありますでしょうか?
今年度から当社の安全衛生方針の一つとして「ウェルビーイング」を掲げています。といっても、「ウェルビーイング」という言葉の意味を全従業員が理解し、考え方を定着させるという基礎的な段階です。メディカルトラストさんに期待するところは、私たちの会社の形態だと、こういう良好事例が取り入れやすいのではないかというアドバイス等、これまで様々な衛生環境を見てこられた知見をいただければありがたいと思います。
ウェルビーイングについては年間計画を作成して、実施内容とスケジュールの概要を各事業場に発信していますが、まだ計画の隙間も多いので、こういう活動を取り入れたら良いのではないか等のアドバイスをいただければ、更に充実していくのではないかと思っています。
また、産業医の先生による職場巡視の際に、環境面や作業面の業務改善アドバイスをいただくことで担当者の意識や知識が向上します。職場巡視の際に要改善事項等があれば、現場の責任者と情報共有し、必要に応じて改善を実施しています。今は化学物質の管理に関して、産業医の先生にも意見をいただきながら、化学物質管理が適正に実施できるように進めています。現場の担当者とコミュニケーションをとって対応しておりますので、継続していきたいと思っています。
—————–最後になりますが、葛本様が産業保健業務に携わる中で、やりがいに感じることは何がありますでしょうか?
安全衛生委員会等で情報共有している危険の防止や健康障害の防止の取り組みについて、各従業員がしっかりと自分のものとして、意識して行動しているのを見た時ですかね。私は毎月すべての拠点を回り、現場の安全パトロールと安全衛生推進委員会に参加するようにしています。その際には、現場の従業員と話しをする機会もあり、意見ももらえるので、本社から伝えたこと以外にも自主的に創意工夫をして、安全衛生施策に取り組んでいる様子がわかります。すべての現場を見ているので、多くの現場の方々と話ができて、無災害で元気に勤務している様子を見ると良かったと感じますね。
—————–本社の方が直接現場に来て職場のことを一緒に考えてくれるのは、現場で働いている方々にとってはすごく心強いことと思います。
現場を訪問し顔をあわせる機会を増やすことでコミュニケーションがとりやすくなる実感があるので、現場の訪問は重要だと感じていますね。また、私は、メディカルトラストの中島さんと衛生関連の相談のためにコミュニケーションとる機会が多く、これまで継続して担当していただいているので、やりやすいなって思っています。引き続きよろしくお願いいたします。
—————–ありがとうございます。みずむすび様と産業医の先生が同じ温度感で産業保健に取り組まれていらっしゃるので、その中でやりやすいって言っていただけるの は一番嬉しい言葉ですし、とてもありがたいです。私どもは橋渡し役で、お客様と先生の業務が円滑に回ってくださることが理想ですので、引き続きよろしくお願いいたします。