女性にとって「生理休暇」は重要な時間ですが、その重要性はあまり知られていないようです。一定の賃金を支払う生理休暇を設定している企業ですら、取得率は0.9%と「申請する人はほとんどいない」状況です。女性の側からすると生理のことは周囲に話しにくいという意識がベースにあり、ましてや上司が男性の場合、「話しにくさ」はさらに増していることでしょう。このコラムでは生理休暇の重要性と、取得しやすい有用な制度にするための方法について、女性の立場からご提案します。
生理休暇制度の有無と取得率
厚生労働省の雇用均等基本調査によると、有給の生理休暇を設けている企業の割合は下のようになっています(図1)。
【図1 有給の生理休暇を設けている企業の割合】
令和2年度では有給の生理休暇を設定している事業者は全体の約3割にとどまっています。
それだけではなく、令和2年度に生理休暇の請求をした女性の割合はごくわずかで、0.9%にとどまっています。制度があっても、まったくと言っていいほど利用が進んでいない状況です。
現代女性の生理は昔の5倍
一方で、女性の生理の回数は昔よりはるかに多くなっていることが分かっています。というのは、昔の女性は若い頃から多くの子どもを産んでいました。妊娠中は、生理は止まります。しかし少子化と言われる通り、現代女性の妊娠・出産回数が大きく減っており、これが生理回数の増加につながっているのです。
そもそも生理は、女性の体に妊娠準備期間があるために起きる現象です。女性の体は約1か月周期で妊娠に備えています。受精卵を受け止めるために1か月かけて子宮内膜を厚くしていくのですが、その期間中に妊娠しなければ、準備してきた子宮内膜が一気に剥がれ落ち、体の外に排出されます(図2)。妊活をする女性に「タイミング」があるのは、子宮内膜がある程度厚くなっている時でないと、受精卵を子宮に留め置くことが比較的難しいためです。
【図2 生理のしくみ】
女性は月に1回程度の感覚で、体の中で内膜剥離を起こしている、そう表現すると分かりやすいでしょうか。子宮の内膜剥離にともなって下腹部が痛む、これが生理痛です。
排卵痛を生じる人も
また、下腹部の痛みは排卵時に起きる女性もいます。筆者にも経験があります。下腹部に突き刺さるような痛みが生じ、立っていられないほどでした。女性の下腹部の痛みは様々な理由で起きます。よく、女性のほうが痛みに強いと言いますが、その女性でも時によってはのたうち回るような生理痛や排卵痛を経験している人は多いのです。生理痛に特化した鎮痛剤が販売されているくらいですから、なんとなく想像はできるでしょうか。
生理中に職場で女性が感じている困りごと
女性が生理中に職場で困ることをいくつかご紹介します。まず、上記のように妊娠という大きな出来事が関わるのが生理ですから、体に不調が起きるのは当然のことです。人によって具体的な症状は異なります。それをなんとか我慢したとしても、多くの女性が困るのが「ナプキン交換のタイミング」です。こちらは大王製紙のアンケート調査です(図3)。
【図3 ナプキン交換で困ったこと】
66%が「困ったことがある」と答えています。女性は常に、「モレ」を意識しています。長時間ナプキン交換ができずにいると、ナプキンで吸収しきれなくなった経血が衣服ににじみ出てしまうからです。男性で言うと小水が漏れるのと同じです。しかも、自分の意識でコントロールできず、立ち上がった瞬間に一気にドバッと血液が流れ出ることもしばしばです。これを防ぐために膣内に挿入する血液吸収体がタンポンですが、それでも限度があります。
そして、女性の困りごとはこのような物理的な問題にとどまりません。トイレに行くときにこっそりとカバンの中からポーチを取り出す女性の姿を目にしたことがある男性もいらっしゃると思います。察しの良い人は生理に気づきますが、それがまた女性としては気になる行為なのです。なんとなく気が引けるという感覚でしょうか。1度席から立つのにも、心理的な壁があるのです。これを勤務時間中に何度も経験します。
また、生理は急に始まります。「何日の何時頃始まるよ」と予告はしてくれません。勤務中に生理が始まったことに気づき、あわててコンビニに生理用品を買いに駆け込みたくなることもあるのです。
このような対応が欲しい
最後に、筆者としてこのような対応があると良いな、と考えるものをご紹介します。まず生理休暇を有給、少なくても賃金支給のある病欠扱いにして欲しいということです。先ほど説明したように、生理は内膜剥離の一種です。生理痛などの症状は人それぞれですが、休養に値する、もはや「体の変調」と考えて欲しいと思います。
また、先ほどご紹介したように女性が非常にナーバスになるのが「ナプキン交換」の問題です。これに関しては、女性トイレに自分のポーチを入れておけるミニロッカーのようなものがあれば良いのにな、と筆者は常々思っていました。出勤時にロッカーに自分の生理用品を入れておけば、席を立つ時の気まずさが大きく減ります。
なお、女性からも休暇が欲しいと切り出しづらい、ということもあるでしょう。筆者の会社員時代、これは上手だなと思う女性社員がいました。彼女は定期的に朝、「ひどい腰痛で遅れます」「ひどい腹痛で困っています」といった連絡をしてくる人でした。こうしたワードをある意味「サイン」として暗黙の認識とするのも良いでしょう。直接的な言葉を避けることができます。
「なんとなく」理解して柔軟な対応をしてもらえると助かる、多くの女性はそう考えていることでしょう。
男性からすると理解の難しい生理ですが、女性としては100%全てを分かってくれと思うわけでもありません。「なんとなく」の空気をうまく醸されると、それだけで女性の気持ちは大いに軽くなり、業務に集中できるのです。