健康診断の結果の見方について理解していますか?ポイントについて医師が解説〜血圧を例にとって〜

企業に勤める従業員が、最低でも年に1回受けることになっている定期健康診断。中には健康診断の結果の見方がよく分からず、特に見直しをしていないという人もいるのではないでしょうか。

健康診断は、受けるだけで終わりではありません。結果をきちんと見て、自分自身の健康状態をチェックし、前回の結果と比べてどこが良いか悪いかを評価することが大切です。

今回は、健康診断の一般的な項目と、それらについての判定の仕方、さらに血圧を例にあげて、結果の読み方の解説をしていきます。ぜひ参考にしてください。

定期健康診断は従業員なら必ず年に1回は受けるもの

企業が行う健康診断には、大きく分けて特殊健康診断と一般健康診断とがあります。そのうち、一般健康診断とは職種に関係なく実施する健康診断で、すべての企業・労働者が対象になるものです。

一般健康診断の中に、定期健康診断があります。定期健康診断は、1年以内ごとに1回、定期的に実施することが、労働安全衛生規則にて定められています。
そして法律で、労働者は健康診断を必ず受けなければならないともされています。

定期健康診断の法定項目は?判定分類とは?

ここでは、定期健康診断の健診項目について説明をします。法律で定められた健康診断の項目は「法定項目」といい、労働安全衛生規則則第四十四条に定められています。

労働安全衛生法に基づく定期健康診断
引用)労働安全衛生法に基づく定期健康診断p1

上記の図に記載の項目には、胃のバリウム検査や内視鏡検査はありません。企業によっては、上記に入っていない検査項目が定期健康診断の項目として入っている場合もありますが、それは法定項目ではなく、会社の判断や個人の希望によるオプションとなります。

さて、健康診断を受けたら一か月程度で結果が出ると思います。以下では、日本人間ドック学会の基準値を基に、健康診断結果の判定区分と各項目の見方について解説します。日本人間ドック学会では、以下のように健康診断の結果をAからEまでの判定として区分しています。

日本人間ドック学会の判定区分
引用)公益社団法人 日本人間ドック学会 2022年度判定区分 p1

Cの「要再検査・生活改善」は、「◯◯ヶ月後に、再検査を受けましょう。同時に、生活習慣の改善をまずしていきましょう」という意味です。例えば、C3なら「3ヶ月後」、C6なら「6ヶ月後」、そしてC12なら「12ヶ月後」に再検査を受けるように推奨されるという意味です。
何ヶ月後かというのは、検査結果に応じて変わってきますので、数値がAの異常なしの範囲から離れるほど、再検査が推奨されるスパンは短くなります。

一方、Dは、「より詳しい検査あるいは治療が必要なので、再度医療機関を受診するようにしましょう」とするものです。

なお、先程述べたように、上記の判定区分は2022年4月に改訂された人間ドック学会の例です。
医療機関ごとに独自の区分が設けられるため、企業が提携している医療機関の判定区分は多少異なる場合もあるかもしれません。ですので、健康診断を受けた際には、受けた健康診断の判定区分の意味合いについても、しっかりと確認することが大切です。

血圧とは?もしもC判定、D判定だったら?

さて、食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる疾患の総称として、生活習慣病といういくつかの病気があることをご存知の方も多いと思います。

今回は、その生活習慣病の中でも代表格である、「高血圧」に関連のある検査項目の「血圧」ついて、正しい健康診断の読み方を解説していきます。

(1)血圧とは?高血圧とは?

血圧とは、血液が動脈を流れる際に血管の内側にかかる圧力のことです。血圧は、上の血圧と下の血圧の2つの数字を測りますが、この上の血圧は心臓が収縮して血液を送り出したときの「収縮期血圧(最高血圧)」のことで、下の血圧は心臓が拡張したときの「拡張期血圧(最低血圧)」のことです。*6

血圧の仕組みイラスト
引用)一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 p3

そして高血圧は、血圧の値のうち上の血圧が140mmHg以上の場合、または下の血圧が90mmHg以上の場合、あるいはこれらの両方を満たす場合に診断されます。

血圧値の分類
引用)一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 p6

上の図からわかるように、高血圧の中でも、I度からIII度まで、重症度に応じた区分がなされています。

(2)高血圧の判定区分は?

では、日本人間ドック学会による判定区分はどのようになっているのでしょうか。

  • 収縮期(単位:mmHg)
    • 基準範囲(A判定) 129以下
    • 軽度異常(B判定) 130-139
    • 要再検査・生活改善(C判定) 140-159
    • 要精密検査・治療(D判定) 160以上
  • 拡張期(単位:mmHg)
    • 基準範囲(A判定) 84以下
    • 軽度異常(B判定) 85-89
    • 要再検査・生活改善(C判定)90-99
    • 要精密検査・治療(D判定) 100以上

高血圧の定義の図と照らし合わせると、大まかには、「緑のゾーンがA判定、黄色のゾーンがB判定、赤のゾーンがC判定」、ということになります。赤のゾーンの中でも、上が140-159mmHg、ないし下が90-99mmHgである場合は、I度高血圧に該当します。その場合は、まずは生活習慣の改善と、血圧に応じた再検査が推奨されます。
しかし、II度高血圧以上になると、D判定となり、早めに医療機関を受診することが望まれます。

(3)高血圧の症状は?C判定ならどうする?予防方法や改善策は?

①高血圧の症状

高血圧は、サイレントキラー(静かなる殺人者)といわれるように、ほとんどの人で自覚症状がないことが多いものです。
しかし、症状がないからといって、高血圧を放置すると、突然、脳卒中や心筋梗塞など命に関わる病気になることがあるほか、徐々に腎機能が低下して透析になってしまうこともあるので、注意が必要です。*11

実際に、筆者が健康診断を行うクリニックでも、血圧の数値では高血圧に該当していても、全く症状がないという方もみえます。その際は「健康診断を受けなかったら気づかなかったかもしれませんから、せっかくなので、生活習慣の改善をしてみましょう」というようにお声かけするようにしています。

もちろん、すでに治療が必要なD判定つまりII度以上の高血圧の場合は、なるべく早めに医療機関を受診することを強くおすすめしています。

②健康診断でC判定が出たら?

健康診断でC判定が出た際は、次のような対応をすることが推奨されます。順にみていきましょう。

・家庭血圧を測る

まずは、家庭血圧を測るようにしましょう。家庭血圧とは、自宅で安静にしている際の血圧のことです。この家庭血圧を上手に用いることで、高血圧による病態を正確に診断することや、治療の効果をより高めることができます。

具体的には、毎日朝の起床後と、夜の就寝前の安静時の1日2回、血圧を測ります。
毎日の正しい血圧を記録することで、現在の状態を正確に把握することが可能になります。

・生活習慣を見直し、改善する

こちらに、血圧が高い場合の生活習慣の改善の例を示します。

高血圧治療ガイドライン
引用)一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 p11

高血圧の予防・改善に欠かせないのは、食塩摂取量の制限です。ラーメンや蕎麦などの漬け汁をすべて飲むと、1日の食塩摂取量は簡単に6gを超えてしまいます。麺類の漬け汁を残す、漬物に醤油をつけない、などの工夫をしていくことになります。

その他、肥満の予防・改善や節酒、適度な運動などもあげられます。企業や事業所によっては、C判定以上の方には、保健指導が入る場合もあります。その場合は、保健師の指導に従って、生活習慣の改善を行うことで、数値の改善も見込めると思います。保健指導が終わっても、自分自身で、生活習慣を継続して整えていくことが大切です。

・再検査を受ける

再検査については、血圧が高いというのみで受診をすることはなかなか心理的なハードルが高い場合もあるかと思います。

しかし、症状はなくても高血圧は放置しておくと危険な場合があるので、C判定やD判定の場合は再検査を受けることが望ましいでしょう。健康診断を受けたのが、会社ではなく健康診断クリニックなどの医療機関だった場合は、そのクリニックで再検査を受けると、健康診断時の血圧と比較できるメリットがあります。

あるいは、かかりつけ医が二次検査に対応している病院だった場合は、その病院で再検査を受けるのも良いでしょう。

いずれにしても、無症状だからといって放置しておくことは得策ではありません。再検査によって、高血圧が健康診断の際の一時的なものだったのかどうか、ということもわかりますので、ぜひ受けるようにしましょう。

まとめ

今回は、定期健康診断の項目と、一般的な判定の基準について解説しました。さらに、血圧を例にとって、高血圧と健康診断の判定について、また判定結果に応じた対応についても述べました。健康診断を受けたのであれば、その結果を見直し、生活習慣の改善や再検査など、正しい対応をしていくようにしましょう。

nishicherry2480

執筆者nishicherry2480
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2001年から産業医、産業保健に特化して事業を展開。官公庁、上場企業など1,000事業場を超える産業医選任実績があります。また、主に全国医師面談サービスの対象となる、50名未満の小規模事業場を含めると2,000事業場以上の産業保健業務を支援。産業医は勿論、保健師、看護師、社会保険労務士、衛生管理者など有資格者多数在籍。

20以上の業歴による経験を活かし現場に寄り添い、

最適な産業医をご紹介・サポートいたします

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