新型コロナウイルス感染症の流行は続いています。「働く世代」の中心となる20代から50代までの年代でも多くが感染し、今後も従業員が職場復帰してくる場合が予想されます。今回は、新型コロナウイルス感染症の療養終了後の職場復帰の目安や注意点について、気を付けるべきポイントを解説します。
目次
新型コロナウイルス感染症後の職場復帰の目安は?
(1)新型コロナウイルス感染症の現在の感染状況は?
新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナと表記)は2019年に中国から始まり、その後世界へと拡大しました。
国内でも、いまだにその流行は続いています。以下に示すグラフは、国内の週別新規陽性者数(2022年9月13日時点)を、年代別に示したものです。
上記のグラフを見ると、新型コロナ陽性者はどの年代でもみられますが、「働く世代」の中心となる、20代から50代までの感染者数も多いということが読み取れます。新型コロナの感染状況には波がありますが、職場で陽性者が発生した場合には、療養終了後に職場復帰となることが多いと思われます。
そこで、従業員が職場復帰する際にも、担当者、労働者ともに、どのように対応するかのルールを明確に共有しておく必要があるでしょう。
(2)職場復帰の目安は?
では、現時点で新型コロナ感染後の職場復帰の目安はどのようになっているのでしょうか。ご紹介していきます。
①新型コロナに感染した人の職場復帰の目安
発熱などの風邪症状があり、医療機関等で新型コロナの検査を受け陽性だった場合、保健所や医療機関の指示に従い療養を開始します。療養終了後の職場復帰の目安は、以下のようになっています。
ただし、咳や倦怠感、呼吸苦などの症状については、あくまで「改善傾向」ということが目安となります。人によっては、咳などの症状が続く場合もあり、症状には個人差があります。そこで、診察した医師や産業医等から職場復帰に関する助言を受け、無理のない職場復帰を行うように注意が必要と考えられます。
②検査を受けられなかったが発熱などの症状があり休んでいた場合
新型コロナの感染拡大により、症状があっても医療機関を受診することができないという場合も生じています。検査を受けることができず、新型コロナと診断されていない場合は、人事担当者や上司の方、そして従業員の方の双方が出勤可否の判断に迷うこともあるでしょう。
このような、「判断に迷うケース」については、「新型コロナウイルス感染症とみなしたより安全な対応」が望まれるとされています。
具体的には、発熱などの症状があっても受診や検査が出来ない場合には、新型コロナウイルス感染症の罹患と考えて、発症してから 10 日間は出勤を控えることが望ましい、とされているのです。
従業員それぞれの事情に応じることは大変ですが、状況に応じて可能な限りはガイドラインにしたがって対応をしていきましょう。
企業側は新型コロナの陰性証明を従業員に提出させた方がよいの?
それでは、企業側が、職場復帰する従業員に対して、新型コロナの陰性証明の取得を指示することは適切と言えるでしょうか、そして、提出させた方が良いのでしょうか。
新型コロナ患者は、医療保健関係者による健康状態の確認を経て、入院・宿泊療養・自宅療養を終えることができるかどうか、判断されます。よって、療養終了後に勤務等を再開するにあたって、職場等に陰性証明を提出する必要はない、とされています。*
また、感染者は発症後1週間程で感染力が急激に低下し、10日を過ぎれば他人に感染させないことが明らかになっています。ゆえに、厚生労働省は感染後に勤務を再開する際に陰性証明の提出は必要ないとしています。
ですので、原則として事業者は従業員や取引先等に対して陰性証明の提出は求めないようにしましょう。
また、法令等で求められていない陰性証明は、事業者の都合という解釈になるので、費用については事業者が負担するものであると考えられる、ともされています。感染後に勤務を再開する際に陰性証明の提出は必要ないとしています。
もしも、企業側の都合で、陰性証明が必要ということであれば、その検査に関わる費用は企業側の負担とするのが良いと考えられます。
もちろん、周囲に感染させるかもしれない、などの不安感から、療養終了後に陰性確認のための検査をさせたくなるという心情は理解できます。しかし、PCR検査では、検体の取り方や時期によっては、最初の検査で陰性になった者が、その後陽性になる可能性もあります。
療養終了後のすぐにPCR検査をした場合、すでに感染性はなくても、PCRは陽性になってしまうこともあるのです。
実際に、筆者が行政で業務にあたっていた際、「職場から陰性証明書を求められたが、どこで検査をしてもらえるのか」「治癒証明書を持って行かないといけないと言われたが、その費用は行政が出してくれるのか」というような問い合わせが数多くありました。
また、療養解除後に職場からの求めに応じるためや、自分の不安解消のため、PCRを自費で受け、再度陽性になったという事例も、複数経験しました。
いずれも、先に述べたように、本来は不要であった手続きを行ったため、混乱する事態が生じてしまった例です。人事担当者や上司は、感染への不安感や恐怖心から、不必要な自宅待機や追加検査を行わないよう、ガイドライン等に基づいた適切な指示を出すようにしましょう。
新型コロナ感染症から従業員が復帰する際の注意点は?
手続きの面での職場復帰の目安について解説してきました。次に、復帰者の体調面について考慮すべきことを述べていきます。
(1)新型コロナの罹患後症状(後遺症)に注意しよう
新型コロナに感染したあとでも、罹患後症状(りかんごしょうじょう)という、いわゆる後遺症に注意が必要となります。
新型コロナ感染後の罹患後症状とは、罹患してすぐの時期から持続する症状や回復した後に新たに出現する症状、症状が消失した後に再び生じる症状の全般をさしています。症状としては、以下のようなものがあります。
新型コロナからの回復の経緯や、感染による心身の負担には個人差があるとされています。今までと同じ仕事を人事担当者は望むことが多いと思いますが、可能かどうかについては本人と相談の上で決めていきましょう。
新型コロナの療養終了後に従業員が職場復帰する場合は、業務によって症状を悪化させること等がないようにしましょう。
具体的には、主治医等の意見を踏まえた本人の申出に基づき、産業医や産業保健スタッフとも連携し、勤務時間の短縮やテレワークの活用など、労働者の負担軽減に配慮した無理のないものとすることが望ましいとされています。
最初から感染前の仕事に戻ることが難しい場合もありますので、本人の体調も考慮しながら、仕事を割り当てるようにすると良いでしょう。
(2)コロナ感染によるいじめなどに注意しよう
また、中傷などについても注意をする必要があります。新型コロナの感染不安から、感染者、その家族や職場の同僚に対しての不当な差別や偏見が生じてしまうこともあるかもしれません。不確かな情報をもとに、嫌がらせ、いじめ、退職勧奨や SNS 上での誹謗中傷などを行わないことを関係者に理解してもらうようにしましょう。
差別や中傷などが生じてしまう背景には、周りの方の新型コロナへの感染不安もあると思います。そこで、65歳以上の高齢者や、悪性腫瘍・糖尿病などの基礎疾患を持ち、重症化リスクのある方については、就業配慮を行うということも大切になります。
職場の担当者は、職場復帰をした方の体調やメンタルへの配慮だけでなく、こうした周囲の従業員の相談窓口を設けることが大切です。新型コロナウイルス感染症は、今や誰もが感染する可能性がある疾患です。お互いの不安を解消し、安心して職場復帰ができるようにしましょう。
まとめ
今回は、新型コロナウイルス感染症から従業員が職場復帰する際、注意すべきポイントについて解説しました。新型コロナウイルス感染症は、今や誰もが感染する可能性がある疾患です。お互いの不安を解消し、安心して職場復帰ができるようにしていきましょう。