健康経営に繋げよう!企業も従業員も元気になる健康診断のススメ

企業にとって、従業員の健康は経営基盤を支える重要な要素の一つです。そして、企業は労働安全衛生法にもとづき、常時使用する従業員に対して医師による健康診断を実施する義務を負っています。

これは、勤務時間など一定の条件を満たすパートタイム労働者に対しても同じです。一方で、従業員側にも健康診断を受ける義務があります。

一般健康診断の対象者一覧
出所)厚生労働省 東京労働局「よくあるご質問>労働安全衛生関係>Q16.一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?」を参考に筆者作成

しかしながら、現実問題として健康診断の受診率100%を達成するのは簡単なことではありません。毎年のように、従業員の健康診断受診率アップに悩んでいる担当者も多いことでしょう。

そこで今回は、健康診断の受診率アップにつながる「工夫」をいくつか提案します。健康診断を健康経営に結びつけた事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

従業員の健康診断受診率を高める工夫

従業員の積極的な健康診断受診を促すためには、安心して健康診断に臨める制度や健康診断を受けやすい環境を整えることが必要です。ここでは、費用もあまりかからず、比較的取り組みやすい工夫をいくつか紹介します。

社内報や掲示物などで健康診断受診が義務であることを周知する

従業員のなかには、健康診断を福利厚生の一環だと思っている人や、受診は任意でよいと考えている人も少なくありません。このような誤解を避けるためには、社内報や掲示物などを活用して、健康診断の受診が義務であることを法的根拠とともに周知するのが有効です。

健康診断に関する事項を就業規則で定める

健康診断の受診が義務であることがわかっても、受診を拒む人はいることでしょう。そのような場合に備えて、健康診断に関する事項を就業規則で定めておくことをおすすめします。

ただし、一方的に義務を押し付けるのではなく、健康診断結果の漏えい・滅失・改ざん等防止のための体制整備も併せて実施しておくと、従業員が安心して健康診断を受けやすくなります。

企業全体で健康診断受診日を決める

「仕事が忙しい」「医療機関へ行くのが面倒」などの理由で受診率が上がらない場合は、企業全体で健康診断の受診日を決めるという方法もあります。この場合、すべての対象者が健康診断を受けられるように、複数の日程を用意するのがポイントです。部署ごとに繁忙期が異なる場合は、部署単位で受診日を決めるのもよいでしょう。なお、日程を設定する場合には、パートタイム従業員のシフトも考慮してください。

健康診断の受診にかかる時間を業務時間として取り扱う

健康診断は業務遂行と直接かかわりのあるものではないため、本来であれば受診に要した時間の賃金を企業側が支払う義務はありません。また、業務時間として取り扱うかどうかは労使の話し合いで決めるべきです。

しかし、業務時間として取り扱えば、パートタイム従業員の業務時間外に健康診断を実施しても、受診してもらいやすくなります。もちろん、正社員の受診率も高まるでしょう。

健康診断を受けられる期間を長めに設定する

薬局など従業員の代替が効かない職場やシフトの調整が難しい職場では、健康診断を受けられる期間を長めに設定しましょう。

このような職場では、従業員がシフトを調整しつつ個々で健康診断を受ける場合が多いようですが、代替が効かないため複数人が同日に健康診断を受けることはできません。そのため、健康診断を受けられる期間が短いと受診できない人が多数出てきます。現場の意見にも耳を傾け、対象者全員が無理なく受診できる期間を設定しましょう。

健康診断を受けられる施設を複数箇所用意する

企業内で健康診断を実施せず、医療機関を指定して従業員に健康診断を受けさせる場合は、複数の施設を候補として選び、従業員が自由に選択できるようにすると受診率アップにつながります。

特にテレワーク化が進んでいる企業では、従業員の居住地に配慮して医療機関を指定するとよいでしょう。

(例)従業員の健康診断受診アップにつながる工夫

「従業員の健康診断受診アップにつながる工夫」の参考例とそのポイント

健康診断を健康経営につなげるヒントと成功事例

ここからは、健康診断を健康経営につなげるヒントと、実際の成功例を見ていきましょう。

健康診断を健康経営につなげるヒント

健康経営を実現するためには、正社員や一部のパートタイム従業員だけではなく、ほかのすべての従業員の健康にも配慮するべきでしょう。そこで、健康診断の対象者を全従業員に広げてみてはどうでしょうか。健康診断を受ける際に、がん検診などをオプションで受けられるようにするのもよいかもしれません。

もっとも、これらの費用をすべて企業が負担するとなると、場合によっては財務状況にも響きかねません。そのため、このような制度の導入を考える際には、負担を一部にとどめる、あるいは上限額を決めておくなどして負担が過大にならないようにすべきでしょう。

また、健康診断のアフターフォローにも力を注ぐべきです。健康診断を受けて異常所見が見つかった場合、一定の条件を満たせば従業員は二次健康診断と特定保健指導を無料で受けられます。無料で受診できるのは1年度内に1回のみですが、シフトを変更するなどして従業員が受診しやすい環境を整えることも大切です。

その他、「有所見者以外でも医師などに相談できる機会を提供する」「従業員の万が一に備えて治療休暇制度を定める」などのルール作りも、健康診断を健康経営につなげる方法の一つといえます。

健康診断を健康経営につなげた成功事例

ここからは、健康診断を健康経営にうまくつなげた成功事例を紹介します。

健康診断を健康経営につなげた成功事例集

従業員の健康は事業者の財産

がんや糖尿病などの傷病を有する従業員に対して、治療と仕事の両立ができる取り組みをしている企業は約4割です。しかし、これらの企業の多くが取り組みに関して困難や課題を抱えています。

課題としてよくあげられるのが、「代替要員の確保」や「上司や同僚の負担」です。このようなマンパワーの問題を最小限に抑えるためにも、定期健康診断で従業員の健康状態を把握することはとても重要です。

「従業員の健康」という代えがたい財産を守るためにも、健康診断受診率の向上を図り、同時に健康経営をかなえましょう。

 

中西真理

執筆者中西真理
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公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。

20以上の業歴による経験を活かし現場に寄り添い、

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