社員の信用を失う会社が無自覚にやっている7つのこと

「従業員エンゲージメント」といった概念が浸透し、従業員との信頼関係を構築するために苦心している企業も、多いのではないでしょうか。

しかし、筆者がこれまでに見てきた中では、返す刀で社員の信用を損なっているケースが、少なくありません。

本記事では、経営陣が気づきにくい、無自覚な行動や態度に焦点を当て、以下の7つをご紹介したいと思います。

  1. 過去に対する過剰なロマンス
  2. エコーチェンバー現象
  3. 過度な楽観主義
  4. 感謝・ねぎらいの言葉だけ
  5. 社内恋愛
  6. 相手によって異なる態度
  7. 社長同士で話す内部情報

(1)過去に対する過剰なロマンス

1つめは「過去に対する過剰なロマンス」です。

これは、社長や経営陣が “過去の成功” を神話化して、固執している状況を指しています。
過去の成功に固執すれば、新しい挑戦やイノベーションは阻害されます。
たとえば、過去の優秀だった社員を美化すれば、現在の社員は、不当な比較やプレッシャーにさらされます。

筆者も経験があります。
「伝説」といわれる創業メンバーがいた会社では、その人が退社したあとも、その存在が重いフタのように、頭上に存在し続けていました。

あるいは、社長が経験した創業期の苦労話や成功談も、承認欲に根付いた自慢話であれば、「この人を信じて、ついていこう」という意欲は低下していくばかりです。

(2)エコーチェンバー現象

2つめは「エコーチェンバー現象」です。

エコーチェンバー現象とは、同じ意見が反響(エコー)し合うことで、新しいアイデアや異なる視点が抑圧される状況を指します。
SNSなどの閉じたコミュニティで観測される現象として、名付けられました。

エコーチェンバーとは?】

「エコーチェンバー」とは、ソーシャルメディアを利用する際、自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローする結果、意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってくるという状況を、閉じた小部屋で音が反響する物理現象にたとえたものである。

中途採用などで新しい社員が入社したとき、経営陣と古くからいる社員によって作られるオフィス空間で、エコーチェンバーを感じることがあります。
せっかく新しい風を吹き入れようとしても、「自分たちの意見やアイデアが無視される」と感じられ、組織内の不満や離職率の増加につながることは少なくありません。

(3)過度な楽観主義

3つめは「過度な楽観主義」です。

楽観的に物事を見ることは、悪いことではありません。しかし、度が過ぎれば、企業内での重要な問題やリスクに対して、不適切な対応につながることがあります。

たとえば、社員が不正行為について、社長に不安を直訴しても、その意見が軽視されるケースです。
システムの不具合や潜在的なリスクを指摘したのに、軽視されることもあります。
実際、大きな不祥事でニュースとなる企業の背後には、初期に意見を述べた、心ある社員がいたことでしょう。

貴重な社員は「いくら言っても、届かない」と悟って去り、最終的には、大きなダメージとなって問題が露呈します。

(4)感謝・ねぎらいの言葉だけ

4つめは「感謝・ねぎらいの言葉だけ」です。

近年、コミュニケーションの重要性が強調され、経営者やマネジャーは、社員への声かけに注力しています。
しかしながら、社員は雇用されて給与を得ている以上、金銭的な報酬を通じた、具体的な評価を求めていることも事実です。
どれほど言葉を尽くしても、利益を社員に還元せずに私腹を肥やしていれば、信用を得られないのは当然といえます。

筆者が経験した中では、口下手でコミュニケーションをほとんど取らないのに、社員たちから絶大な信用を得ていた社長がいます。
彼が行っていたことは、正当な評価と、経営者としての行動への確実な反映(昇給・賞与)でした。

(5)社内恋愛

5つめは「社内恋愛」です。

独身者同士の純粋な恋愛であれば、社内恋愛自体が、問題となるわけではありません。

しかし、それが隠されている場合、その「隠されていた」という事実が、組織内の信用に悪影響を与える可能性があります。
たとえば、社員のAさんが社長と恋愛関係にあることを知らず、Aさんに会社の悩みを相談していた社員は、その関係が明らかになったとき、驚きと不信感を抱くかもしれません。

なかなか難しいことではありますが、組織としては、恋愛関係を隠すことなく、オープンで健全なコミュニケーションの促進が望まれます。

(6)相手によって異なる態度

6つめは「相手によって異なる態度」です。

筆者の体験談を、ひとつお話します。

あるとき、社長に同行して、取引先のオフィスへ商談に行きました。
応接室で説明を受けた際、取引先の担当者は、不慣れと思われる若手社員でした。
社長は、イライラした様子で腕組みし、ぞんざいな態度をしています。

そこへ通りかかった取引先の重役が、ひょいと応接室に入ってきた瞬間、社長の態度が豹変しました。
まるで米つきバッタです。

転職しようと決めた瞬間でした。
とくに、“弱い者に強く、強い者に弱い態度” は、社員の信用を失う原因といえます。

(7)社長同士で話す内部情報

7つめは「社長同士で話す内部情報」です。

“社長あるある” かもしれませんが、社長同士の会食やゴルフで、社内の組織的な悩みや愚痴を話すことが多いようです。
社長ならではの孤独や不安を共有できる、大切な時間かもしれません。

しかしながら、相手が取引先の社長だった場合、取引先および自社の社員などに、悪意なく、内容の一端を漏らされるケースがあります。
“社長同士のオフレコの会話” や、“お酒の入った席での軽口” のつもりが、意外な形で自社の社員に伝わる、ということです。

実際に筆者が経験したところでは、以下のようなフレーズを取引先の社長から聞いて、ぎょっとしたことがあります。

  • 「最近、かわいい子が入ったって聞いたよ」 
  • 「組織を再編されるらしいですね」※社内通知前
  • 「○○社長、組織のことで悩んでいるみたいだから、支えてあげてな」
  • 「△△さんはメンタルやられちゃったって聞いたけど、大丈夫?」

自社の社員と接点がある人物に話すトピックには、細心の注意を払いたいところです。

さいごに

以上、社員の信用を失う会社が無自覚にやっている7つのことをご紹介しました。

  1. 過去に対する過剰なロマンス
  2. エコーチェンバー現象
  3. 過度な楽観主義
  4. 感謝・ねぎらいの言葉だけ
  5. 社内恋愛
  6. 相手によって異なる態度
  7. 社長同士で話す内部情報

本記事では、あえてユニークな視点から捉えてみました。
もちろん、基礎的な取り組みとして、以下は必要不可欠です。

  • 社内コミュニケーションの活性化
  • 適切なフィードバック
  • 公正な人事評価制度
  • ワークライフバランスの充実
  • 職場の透明性の向上
  • 心理的安全性の確保

ただ、現場の社員の視点から見ると、「会社を信用できない」という気持ちになるシーンは、もっと生々しく、リアルな感情を伴うことが少なくありません。

辛辣な表現になってしまいますが、筆者自身、「エンゲージメント向上施策の前に、無自覚の信用喪失に気づくべきでは?」と思うことがありました。
表面的ではなく、現実に根ざした信用獲得のヒントとして、参考にしていただければ幸いです。

三島 つむぎ

執筆者三島 つむぎ
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ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。

20以上の業歴による経験を活かし現場に寄り添い、

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