類似性の法則とは、「人は自分と共通点が多い人間に対して好感を抱きやすい」というものです。
国民的アニメ「ドラえもん」の映画版でジャイアンが「頼れる良い人になる」現象は、この法則で説明できるでしょう。
今回の記事では「類似性の法則」という心理学的な法則について解説し、日常生活や職場で「なんとなく苦手だな」と感じる同僚や上司と上手く付き合うため、そして仕事を楽に進めていくためのヒントを提案します。
ぜひ参考にしてみてください。
目次
のび太とジャイアンが映画では仲良くなる理由
国民的アニメ作品「ドラえもん」での中心人物に、「のび太」と「ジャイアン」がいます。
この2人は、アニメの日常パートでは、いじめられっ子といじめっ子という関係性が明確に見られます。
ジャイアンがのび太に無理難題を持ちかけたり、いじめたりすると、のび太がドラえもんに頼る、というシーンも多いようです。
一方、映画版になると、ジャイアンが頼れる存在になり、のび太やドラえもん、しずかちゃんやスネ夫と言った友達とも協力して困難に立ち向かう、という構図になります。
ジャイアンはもともと腕っぷしも強く、度胸もあるので、味方にできればとても心強い存在です。
このジャイアンの立ち位置の変わり具合を、筆者は長年「ジャイアン、映画でいい人になる説」のように呼んでいました。
また、インターネットなどでも同様の意見を持っている人がいるようです。
最近になって、「類似性」という心理学的用語を知り、この現象を心理学的に説明できるのではないかと考えるようになりました。
そこで、以下ではまずこの「類似性」について簡単に述べ、「映画ドラえもん」の中ではどのように当てはまるのかを述べたいと思います。
(1)「類似性」の法則とは
類似性とは、容姿や態度、能力、性格などの特性が他者と似ている度合いのことを指します。
この類似性は、共通点と言い換えることもできます。
この共通点が多いほど、人間は他者に対して好感を抱きやすい、といわれています。
共通点は、仮想の敵や抱えている課題、目指すもの、などでも良いようです。
いわゆる、「類は友を呼ぶ」という言葉でも説明ができるように、人は共通点がある人には親密な感情を持ちやすいということです。
(2)「映画版ドラえもん」では共通の敵が出現する
この類似性は、映画版ドラえもんで登場する「強力な敵」に該当するかと思います。
ほぼ例外なく、映画版のドラえもんではなんらかの敵が現れ、のび太やドラえもんたちは敵に立ち向かっていかなければならなくなります。
そこでは、のび太とジャイアンには類似性、つまり共通点が生まれます。
大きな課題を解決するために、ジャイアンとのび太以外のその他の仲間たちにも強い信頼関係が生まれるのでしょう。
その結果、協力して見事敵を倒し、平和が戻ってくるという大円団を迎えるのです。
このように、ジャイアンがいじめっ子から頼れる人になるという過程には、協力して立ち向かうべき敵、つまり目標の存在があるのではないかと思います。
「類似性の法則」を人間関係や職場で活かすためのヒント
この「類似性の法則」を人間関係や職場で活かすことは可能でしょうか。
筆者が考える、「類似性」をうまく活用する方法について実例を交えて、解説していきます。
(1)「類似性」は共通の話題となりコミュニケーションを取りやすくする
職場では、多少自分と性格的に合わないと感じる人とも仕事を一緒にしなければならない場面があります。
その際には、「類似性」を見つけることは、共通の話題を探すために役立つでしょう。
例えば、飼っているペットや出身地、趣味なども共通点になる可能性があります。
また、健康状態に関しても、場合によっては話がはずむ話題になることがあります。
もちろんセンシティブな内容ではありますが、同じような病気や怪我を経験すると、同じ体験を共有できるような感覚を得られる場合があります。
類似性、つまりお互いの共通点があると知ると、親近感がわき、コミュニケーションを円滑にとることができ、職場であれば一緒に仕事がしやすくなるという効果も期待できます。
(2)筆者の周りの実例をご紹介
類似性の法則は、職場においては同僚だけでなく、仕事の相手と良い関係を構築するために役立つ可能性もあります。
ここでは、筆者の周りの例を2つほどあげてみます。
−1 筆者自身と職場の同僚医師との関係
筆者は、職場の20歳ほど年上の同僚医師となかなかコミュニケーションがうまく取れず、少し悩んでいた時期がありました。
そんな中、筆者は乳がん検診で精密検査を受ける必要があるという結果がでました。
筆者は医師であり、異常な所見があった場合の流れについて非医療従事者の方よりは理解しています。
しかしながら、いざ自分が精密検査を受けなければならないとなると、心穏やかではありません。
最悪の事態を想定し、もし悪性であれば今後の勤務にも支障が出る可能性も考慮し、この件を同僚医師に伝えたのです。
すると、その医師も過去に同様な異常を指摘され、手術などを受けていた、ということが判明したのです。
同じような異常を指摘されたという「類似点」があり、その場合にどのように対応したのかを聞き、親近感や安心感を感じました。
同じような悩みを抱えたもの同士、お互いに以前よりも円滑にコミュニケーションが取れるようになったと思います。
−2 医師と健康診断受診者の関係
では、次に仕事の相手との関係についても例をあげてみます。
これは、私が働いている健康診断クリニックに実際に勤務している医師の例です。
筆者たち健康診断クリニックで働いている医師にとっては、仕事の相手として健診受診者の方たちが含まれます。
筆者たちは、日々受診者の方の内科診察を行ったり、必要な方には生活指導をしたりもしています。
筆者の職場で勤務している男性医師Aは、数年前までは体重が10kgほど現在と比較して重く、生活習慣病予備軍だったとのことです。
彼は体重を減らすために、毎日1時間のウォーキングを始めました。
体質にあっていたのか、1年間かけて彼は10kg体重を落とし、無事に健康体を手に入れたということです。
さて、彼はこの自分の成功談を、体重を減らした方が望ましいと思われる受診者男性たちに伝えています。
「体重が標準よりも重たいが、何から始めていいのかわからない」という悩みを持つ受診者の方にとっては、男性医師Aのような成功体験はとても参考になるようです。
大半の方はこの体重を減らす方法を聞き、「自分もまずは歩いてみます!」という気持ちになっているように見受けられます。
筆者たちの仕事においては、受診者の方に医療従事者の話を聞きたい、と思ってもらえることが大切です。
受診者の方にとっては自分にとって有益な情報が手に入りますし、筆者たち医療従事者にとっては「仕事がうまく運ぶ」ということにもつながるのです。
この男性医師Aは、「体重が重たい」という仮想の敵・共通の課題を想定し、それに対処した方法を話すことで、受診者の方の意識を自分の方に向けています。
そうすることで、その他の血糖値や脂質の値などの細かい内容の説明もしっかりと聞いてくれるように促しているのです。
まとめ
今回の記事では、「類似性」という共通の課題などが人との関係性に与える影響について、ドラえもんののび太とジャイアンの関係や、筆者の実例を交えながら解説しました。
日々の生活を送る上で、もしも「ちょっと苦手だな」と感じる人がいる場合には、一度その人の好きなものや悩んでいる事柄をリサーチしてみるのもよいのではないでしょうか。
この記事が日常生活を送る上で、何かの役に立てば幸いです。