日々の生活の中でストレスを感じイライラしてしまう、という方は多いかと思います。
筆者も、特に職場での対人関係でそうした感情を持ってしまうことがあり、自分なりに対処方法を考えてきました。
今回の記事では、医師である筆者が考えるストレスへの対処法について、精神科医から学んだ点もまじえてご紹介します。
目次
ストレスとは何か?なぜイライラを感じるのか?
まずは、ストレスとは何かについて解説します。
ストレスとは?ストレス反応としてのイライラ
医学や心理学の領域では、こころや体にかかる外部からの刺激をストレッサー、ストレッサーに適応しようとして、こころや体に生じたさまざまな反応をストレス反応と言います。
人のこころや体に影響を及ぼすストレッサーには、さまざまなものがあります。
ここでは、人間関係や仕事上の問題、家庭の問題などの「心理・社会的ストレッサー」、それに対する「ストレス反応」を中心に述べていきます。
実際に普段皆さんが「ストレス」という用語を使う際にも、こうした意味で用いていることが多いかと思います。
さて、職場では、仕事の量や質、対人関係をはじめ、さまざまな要因がストレッサーとなりえます。
これに対するストレス反応は、以下のような心理面、身体面、行動面の3つに分けることができます。
- 心理面でのストレス反応
活気の低下、イライラ、不安、抑うつ(気分の落ち込み、興味・関心の低下)など
- 身体面でのストレス反応
体のふしぶしの痛み、頭痛、肩こり、腰痛、目の疲れ、動悸や息切れ、胃痛、食欲低下、便秘や下痢、不眠など
- 行動面でのストレス反応
飲酒量や喫煙量の増加、仕事でのミスや事故、ヒヤリハットの増加など
ストレス反応が深刻になるにつれて、身体や行動面にも問題が現れてきます。
筆者も様々なストレッサーに、いかにして楽に対応できるか、をずっと考えてきました。
そのいくつかについて、精神科医からの助言も併せていくつか方法をご紹介します。
筆者の周りの精神科医に学ぶストレスのセルフケア
(1)筆者がコロナ禍で学んだストレスのセルフケアの例
筆者は、コロナ禍の際に行政分野で働いていたこともあり、毎日地域住民のクレーム処理やスタッフのマネジメントなどを行なっていました。
未曾有の経験だったため、現場全体にかかるストレスも多く、スタッフとともに筆者も毎日疲弊していました。
ストレッサー・ストレス反応に対しての対処法としては、以下のようなものがあります。
- 音楽を聴く
- 日記をつける
- 絵を描く
- 空を見る
- 深呼吸する
- ストレッチをする
- 歌を歌う
- ゆっくりお風呂に入る
- よく寝る
このような対処法の中から、自分にあったイライラ解消法を見つけていくと良いかと思います。
筆者は、「歌を歌う」が特におすすめです。
筆者自身、毎日自転車通勤でしたので、帰り道の人通りのない中、好きな歌を歌いながら帰宅していました。
声を出すことで、ネガティブなことを考えないようになり、気分が晴れる気がします。
もちろん、周りの迷惑にならないように気をつけましょう。
(2)このような場合にはどう対処する?
さて、筆者自身は、コロナ禍の行政と比べて、現在は穏やかな環境で仕事をしています。
しかしながら、やはり仕事の場ではストレッサーとなる出来事は起こります。
具体的には、スタッフとの対人関係などがあります。
ここで、筆者の実体験を元にしたケースをご紹介しましょう。
ぜひ、ご自身に置き換えて考えてみてください。
あなたは今子育て中のため、自分ではコントロールしづらい事で休暇を取らなければならないことがあります。
早め早めにできるだけの対策をとっています。
しかし、新型コロナウイルス感染症に家族が感染してしまったため、急に休まざるを得なかったことがありました。
休暇明けに同職だが勤務歴が長いスタッフにも謝罪をしました。
その際の返事が「あなたのせいで他のスタッフが迷惑だった、負担をかけた」というものでした。
あなたは、周りのスタッフに迷惑をかけてしまい申し訳ないと思っていましたが、その一方で、同様にコロナ関係で急な休みをとるスタッフが多発していたのも事実。
実は、そのように話してきた同僚自身も家族が新型コロナに感染したことで急な休暇をとっていました。
さて、このように同僚から言われた際には、皆さんはどう思いますか。
「お互い様とは思わないのだろうか、わざわざそうした発言をなぜするのだろうか」と、感じ、イライラしたり、モヤモヤとしたりする方もいるのではないでしょうか。
このようなケースでは、どうやって自分の心をケアすると良いのでしょうか。
対人関係においては、時に他人が自分が思いもよらないアクションをとってくることもあります。
それはもちろん職場でもプライベートな間柄でもありえるのですが、職場ではやはり上下関係などもあり、その場で思うように自分の意見が言えないこともあるでしょう。
(3)筆者が精神科医から学んだストレスへの対処法は「他人に期待しない」こと
筆者はこうした対人関係のストレッサーについて、どのように対処しようかと考えました。
その際に、精神科医となった同期の医師や、いままで出会ってきた精神科医の人への接し方を思い出したのです。
もちろん例外はあるのですが、筆者の周りの精神科医は、そもそも他人に何かを「期待」していないように思われます。
自分の考え方や人格と、他人のそれとの間にきちんと一線を引き、他人が言ってきた内容について過剰に反応せず、常に冷静に自分と他人を観察しているのです。
精神科という診療科の性質上、疾患の症状として患者が独自の世界を持っていることがあるため、そのように自分と他人(患者)の間に壁を設けておくことが自分の正しい判断や診断をつけるために必要となります。
そうしたスキルがもともと高い医師が精神科を選ぶのか、それとも精神科に進むためにスキルを身につけていくのか、あるいはその両方かもしれません。
もちろん、プロフェッショナルである精神科医のレベルに達することは困難です。
しかし、「人は人、自分は自分」という意識をしっかりと持ち、他人に過度の期待をしないことで、対人関係のストレッサーにうまく対処できるのではないかと考えます。
筆者の先ほどの例では、筆者は無意識のうちに「迷惑をかけてすみませんでした」と伝えた際に、「それは大変だったね、お互い様だからね」などという返事を期待していたのでしょう。
このモデルケースはほんの一例ですが、職場やプライベートの交友関係で、自分が思いもよらないことをされたり言われたりしてイライラする場面があるかと思います。
こうした時には、「他人は自分の思い通りに動くものではない」「自分がこう思うからといって、他人が同じだと考えるのはやめよう」と考えることで、イライラしたり失望したりする「ストレス反応」を減らすことができ、こころのセルフケアにもなりうるかと思います。
実際に、筆者も最近ようやく「他人に期待しすぎない」ようにできるようになってきました。
それにつれ、イライラする頻度も減り、楽に過ごせるようになったかと感じます。
まとめ
ストレスとうまく付き合っていくためには、自分なりに自分がどのような場面で一番イライラしたり怒りを覚えたりするかを把握し、対応策をあらかじめ決めておくことが大切です。
そうすることで、ストレスとうまく付き合っていくことが可能となるでしょう。
それに加えて「他人に期待しすぎない」というポイントも役立つと思います。
今回の記事が、毎日を楽に送っていく助けになれば幸いです。