日本だけでなく、世界的にもメンタルヘルスの不調を訴えるビジネスパーソンは増加傾向にあります。メンタルヘルスの不調により従業員が休職、離職することになってしまうと、企業にとっては大きな損失となり得るでしょう。
メンタルヘルスの不調はデリケートな問題です。メンタルヘルス対策を医学的見解がないまま、独自の価値観や判断で行うのは危険といえます。そのため、メンタルヘルス対策を産業医と連携して行うことや、産業医との面談の必要性が高まってきました。
この記事では、不調者に気づいたときや不調者から相談を受けた際に、産業医とどのように連携して対応するかを紹介します。休職措置の判断基準から復職の判断基準に加えて、産業医とどのように関わっていけばよいかを把握できるため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
従業員のメンタルヘルスに不調が出た場合の対応と休職判断
従業員にメンタルヘルス不調者が出た場合、個人の主観や価値観だけで対応してしまうと悪化させてしまうリスクがあります。不調者が出た際には、産業医や医療機関など、専門の第三者機関の意見や診断を交えることが重要です。
ここからは、メンタルヘルス不調者が出た際の企業の対応方法について紹介します。
メンタルヘルス不調者の発生
従業員の勤務態度に変化があったり、ストレスチェックで高ストレス判定が出たりなど、メンタルヘルス不調に気付く場面はさまざまです。また、状況によっては本人が不調を自覚していないケースもあります。しかし、不用意に聞き込むのはプライバシーの配慮に欠けてしまう可能性もあるため注意しましょう。
例えば遅刻が増えている従業員がいた場合、残業が続いた影響で睡眠時間が確保できていないのかもしれません。人間関係がうまくいっていなくて出社の決心がなかなかできないのかもしれません。こういったように、労働時間や職場環境、人間関係などの原因も視野に入れ、不調の原因を考えて対応方法を見極めていく必要があります。
医療機関への受診や産業医への相談を促す
メンタルヘルス不調になったとき、本人に自覚がなかったり、どう対処してよいかわからなかったりする場合があります。個人の価値観でアドバイスをしてしまうと、間違った対処方法を伝えてしまい、改善に至らず症状が悪化してしまうといったリスクも考えられます。
そのため専門の医療機関や産業医との面談を通じて、回復への正しい道筋を見いだしてあげることが重要です。まずは、従業員の声にしっかりと耳を傾けて改善できることについては見直し、本人には医療機関や産業医との面談を促して、回復に向けたセルフケア、必要に応じて通院治療ができるように導きましょう。
産業医面談の実施・主治医に診断書をもらう
メンタルヘルスの不調を専門知識のない企業で判断するのは非常に困難です。誤った判断や対処をしないために、産業医面談の実施、通院を促し医療に繋げる、既に通院している場合は主治医の診断書を入手しましょう。
不調はデリケートな問題のため、精神論や慣習で諭そうとすると逆効果になってしまうこともあります。また、単に休職とするだけでは根本となる原因の改善に至らなかったり、本人が不調との向き合い方を理解していなかったりすると一向に回復しません。
産業医との面談後は意見書を作成してもらうことが可能です。面談内容によって作成される意見書は専門医の視点のため、不調者の仕事内容や業務時間の見直し、休業といった企業側で取る対応に重要な判断材料となります。
また休業が必要となった場合、企業によっては主治医の診断書が必要なところもあるでしょう。診断書が必要な際は、メンタルヘルス専門機関を受診してもらい主治医に診断書を作成してもらいます。
休職措置をとる
休業措置は、産業医の意見書や主治医の診断結果による医学的視点を考慮して決定します。また主治医の診断においては、日常生活に支障がない判断はできても、業務内容は想像になることが多いため、就業の継続が可能かどうか正確な判断はできない可能性があります。診断書の内容と産業医の見解を照らし合わせて休業措置の決定をしましょう。
主治医の診断書や産業医の意見書に休職が必要と記されていても、最終的な判断は企業側です。一般的には主治医から「要休職」「要休業」の診断書が提出た場合には、その指示に従うケースがほとんどですが、あくまで「休職」の判断は企業側が行うという形になります。
従業員に休職の相談を受けたときの対応
従業員から休業の相談を受けた場合には、状況の確認と就業規則など休職について会社でできることの説明をする準備が必要です。ここでは、具体的な対応方法について紹介していきます。
就業規則や休職制度について説明する
就業規則に定められている休業制度の説明をするには事前に内容を把握しておかなければなりません。休職の規定は企業ごとに異なるため、内容によっては従業員とのトラブルにつながります。期間や休職中の給与、また傷病手当金などについて、休職から復職までの規定が記されているか確認しておきましょう。
相談する従業員はメンタルヘルス不調を自覚し、症状や休職期間の生活に不安を抱えています。説明する際には、従業員から多くの質問を受けることが想定されます。質問に答えられないと従業員の不安を増大させてしまうため、説明の前には十分な準備をしておきましょう。
上司や人事労務担当者と面談を行う
直属の上司や人事の担当者は従業員と面談を行って、通院状況など現況の確認を行います。自身の不調を自覚した上で、改善に向けてすぐに相談できる従業員は稀です。従業員から休職の相談があった場合や相談を受けた場合その時点で不調の度合いは大きく、相当に悩んでいるものと考えておくことが大切です。
面談の際は、原因が知りたくても質問攻めにならないように配慮しましょう。質問しすぎると追い詰めて症状を悪化させてしまうリスクがあるためです。
産業医との面談を行う
メンタルヘルス不調に対する医学的見解を得るためにも、産業医との面談は重要です。また、休職に関する悩みが職場の人間関係である場合には、上司や人事担当者には本音が言えないことも考えられます。根本の原因を把握するためにも、第三者となる産業医との面談は企業にも相談者にも有益といえます。
相談者が医療機関を受診していないときは面談前に受診して診断書を作成してもらうように促しておくとよいでしょう。面談の際に診断書があると、産業医は相談内容と診断書を照らし合わせて意見書を作成できるため、スムーズに進みます。
意見書の内容によっては、企業側に労働環境改善など対策が求められる場合もあるでしょう。労働安全衛生法第13条4項において、産業医の意見を尊重し、対策を講じる必要性が明記されています。産業医の意見を職場環境の改善に活かしていきましょう。
※産業医面談の内容の詳細を知りたい方は下記の記事を併せてご覧ください。
休職措置をとる
相談者、産業医との面談や主治医の診断書を参考に、不調者に休職が必要と判断した場合は速やかに伝えましょう。休職の目的や理由を十分に説明し、納得して休職に入ってもらうことが重要です。
中には生活の不安から休職を拒否されるケースもあります。しかし、無理に仕事を継続して症状が悪化してはいけません。
休職の手続きや対応に時間を要する際には、不調者の体調に配慮し、無理に出社を促さず、有給休暇などを取得して休んでもらうとよいでしょう。手続きが終わり次第、そのまま休職に入ってもらうという流れであれば、従業員も負担なく休職期間に入れます。
休職をする際の手続き
従業員に休職してもらうことになった場合、企業側は主に以下の対応を行います。
- 休職届・診断書など必要書類を提出してもらう
- 休職〜復職までの流れと休職期間の説明
- 給与の支払いや社会保険料についての説明
- 傷病手当金などの給付金の申請方法の説明
- 自立支援医療制度の説明
- 休職中の連絡方法や頻度の説明
- 復職時に必要な書類など準備物の説明
従業員にとって大きな不安を感じることは、復職までの道筋と休業中の生活費です。説明する際に、給与や社会保険料についてなかなか折り合いがつかないといったこともあるでしょう。一般的には特別な制度を設けていない場合、休職中でも従業員に社会保険料の支払い義務が生じます。就業規則を確認した上で、傷病手当から支払ってもらうなどの方法を検討し、従業員に納得してもらえる説明ができるよう備えておくことも重要です。
また休職期間中の連絡内容や頻度もしっかりと準備して説明しましょう。メンタルヘルス不調の場合、仕事の連絡が負担になってしまうことが考えられます。
体調確認や復職に向けての診断依頼などの連絡は、休職中の従業員に対して企業側が行う欠かせない連絡事項です。一方で企業側からの過度な連絡は本人の回復に悪影響を及ぼす事もあります。
基本的には就業規則に則り対応するのが望ましいですが、休業者の状態に合わせメール等の利用も含め負担にならないように柔軟に対応しましょう。
復職までの流れについてはこの後詳しく解説していきます。
休職中の従業員に企業側ができるサポート
メンタルヘルスの不調で休職している従業員に対して行うサポートはさまざまですが、何よりも不安にさせないことが重要です。連絡内容や頻度、休業期間の過ごし方への配慮や復職できるイメージをもってもらうために、できることを考えていくのがよいでしょう。
例えば休職初期の段階では不安も大きく思考能力が低下した状態で、上手に休めていないことが考えられます。そのため、復職に関する意志確認といった重要な決断はさせずに、主治医から回復傾向にあるという診断結果が出てからにしてみましょう。
復職への道が見えてきた段階になったら、部署の変更が必要かどうかの確認をしたり、復帰支援プランを提示したりといったこともよいサポートとなります。
休職から復職までの流れ
ここからは、休職開始から復職までの流れについて詳しく解説していきます。復職までの流れを把握して、休職者への対応フローを整える参考にしてみてください。
まずは療養に専念
メンタルヘルス不調による休職初期は、判断力や思考力が低下している状態です。休職に対して罪悪感を抱いてしまうこともあります。まずは仕事から完全に離れて自分のリズムで療養に専念してもらうようにしましょう。
療養に関しては事前の説明に注意も必要です。中には旅行などの外出がリフレッシュになるという方もいます。しかし休職期間中に旅行し、SNSに写真をアップしているのが他の従業員の目に留まった場合を考えてみてください。
事情を理解しているとしても、他の従業員の不満につながったり、クレームに発展したりといった事態が想定されます。事前の対策として休業期間に外出する際はSNSなど、他の方の目に留まることは控えるように伝えておくことも重要です。
復職へ向けての準備
回復の兆しが見えて復職の意思が確認できたら、復職に向けた準備を少しずつ進めてもらいましょう。復職に向けて行うとよいとされている行動は以下の内容です。
- 生活リズムの整備
- 就業に必要な基礎体力づくり
- 外出を増やす
- 通勤訓練を行う
- 対人コミュニケーションを増やす
生活リズムを整えるために、睡眠時間や起床時間など1日の行動計画を立てて、振り返りができるよう記録をつけてもらいます。はじめのうちは、無理なくできる行動にとどめてもらい、計画通りにできるようになってきたら、少しがんばればできることといったように徐々に段階を上げていくとよいでしょう。
計画の中に基礎体力づくりに必要な散歩や軽いトレーニング、外出など復職に向けて必要な行動を入れ、計画と振り返りをしていくことで、前に進んでいるという感覚をもってもらえます。
主治医から復職を承諾された診断書をもらう
従業員から復職の意思を受けただけで復職を決定するのは控えた方がよいでしょう。復職前に主治医の診断を受け、復職できると判断された診断書があれば、医学的見解も得られるため、復職を認められるひとつの根拠が生まれます。
診断書を用意してもらえたら、復職に向けた日程調整や事前の面談などを計画して従業員に連絡していきます。
産業医や上司・人事労務担当者と面談を行う
休業中の従業員をいきなり元の職場に復帰させるのではなく、事前に産業医や担当者との面談を行います。産業医との面談をすることで、業務内容を理解していることを踏まえた医学的見解を参考にした復職判断が可能です。
本人の状況によっては、部署の異動や組織改革の必要があると判断されることもあるでしょう。人事の担当者と面談を行う際には、産業医の意見書を基に、実際に異動したいかなど本人の復職に関する要望がないか確認も行います。
試し出社を行う
メンタルヘルス不調者がいよいよ復職となった際、いざ出勤しようとして会社近くまで来ると、急に怖くなってしまうといったケースがあります。スムーズな復職を果たす、あるいは復職可能かどうかの判断をするために行うのが試し出社です。
試し出社はいきなり会社の中まで来てもらうのではなく、はじめは最寄り駅まで、次に近くのカフェまでといったように、段階を踏んでいくとよいでしょう。また試し出社では、他の従業員と顔合わせしないよう休日に行うといった配慮も有効です。
復職
産業医や人事との面談、試し出社で問題がなければいよいよ復職です。いきなり無理をさせてしまうと再び休職になってしまう可能性もあるため、以下のような調整をしてみましょう。
- 残業時間の制限
- 責任感の軽度なルーティン業務
- 納期に十分な余裕がある業務
就業規則に定めがあるようであれば時短勤務や午前勤務なども検討しても良いかもしれません。
業務上の配慮に加えて周囲の理解やサポートが得られる環境にしておくことも、いち早く完全復職を果たす上で重要です。あらかじめ復職者への配慮や対応方法を事前に決定、周知させておきましょう。
復職の判断について
主治医の診断書や産業医の意見書で復職可能と書かれていたら、即座に復職させられると思っている方も多いのではないでしょうか。主治医の診断と産業医の意見書では、内容に相違がある場合もあります。復職の判断は主治医と産業医、双方の見解を総合的に判断することが重要です。
ここからは、復職の判断方法と主治医の診断内容について紹介していきます。
復職の可否の判断は最終的に会社が行う
休職措置と同じく、復職についての最終判断も企業側で行います。産業医の意見書や主治医の診断書の内容を参考に、復職の可否を決定します。しかし、判断基準を明確にしていないと再休職になってしまうといった可能性もあるため注意が必要です。
主に以下のような基準で復職可否の判断をしましょう。
- 働く意欲
- 生活リズム
- 睡眠時間・起床時間の確認
- 通勤の可否
- 判断力や適応力
休職中に生活記録を付けてもらっていれば、生活リズムが守られているかチェック可能です。睡眠時間は十分に取れているか、起床時間は出社に間に合う時間かを確認します。
通勤の可否は試し出社ができていれば問題ないでしょう。判断力や適応力の確認は、従業員に休職の原因についてどう考えているか、どうなれば解決できるのかといったヒアリングなどで判断していくとよいでしょう。
主治医の診断・意見の特徴
復職における主治医の診断内容は、メンタルヘルス不調の回復で日常生活が安定するかどうかに重点が置かれます。ここでは、主治医の診断内容の特徴について紹介していきます。
・休職者の健康状態をしっかりと把握している
主治医とは、継続的に診断を受けているかかりつけの医師のことです。そのため、休職者の正確な健康状態を把握できるといえます。休職者のメンタルヘルス不調に伴う日常生活の影響や病状を把握しているため、復職の可否に関する的確な医学的判断が得られるでしょう。
・職務内容や職場環境の理解に欠ける部分がある
主治医は健康状態の把握は可能ですが、休職者が行っていた業務や企業の現状までは見えていません。企業が求める業務の遂行に必要な部分まで回復しているかについては、十分に判断できるとはいえないでしょう。
主治医の診断も重要な判断材料ではありますが、職場の理解度が高い産業医との意見を含めて、総合的に復職できるかどうか判断することが重要です。
・従業員の意向が反映されやすい
主治医の診断書には、休職者の「復職したい」という願望や家族の要望が反映されているケースがあるようです。そのため、診断書が医学的根拠として不十分となる可能性が生じてしまい、企業としては有効な復職可否の判断材料になり得ない場合もあります。
このような事態を防ぐために、企業が主治医と面談し、本人の状態を直接確認する方法もあります。ですが、主治医にはプライバシー保護の義務があるため、企業側からの要望だけでは主治医との面談はできず、休職者の同意を得る必要があります。休職者に対して事前に、復職後のフォロー面も含めて主治医と直接面談する可能性もある旨を伝えておきましょう。
産業医の診断・意見の特徴
主治医の診断書だけで復職可否の判断をするのは早計です。そこで、復職前に職務内容について理解のある産業医との面談も実施します。ここでは、産業医の診断や意見の特徴について紹介していきます。
・休職者の職務内容や職場環境への理解がある
産業医には、従業員に対して職務上衛生状態に有害となるものがないか把握するために、職場巡視という業務内容があります。また、毎月の衛生委員会への参加や議事録の確認を通して職場の課題や作業環境にも理解があります。産業医にとって業務内容を理解することは、復職可否の判断をする上で非常に重要なことです。
職場巡視は最低でも2カ月に1回実施、衛生委員会への参加は法令上必ずしも必須とはされてはおりませんが、メンタルヘルス対策、職場への理解を深めるためにも毎月実施するなど機会を増やしてもらうのは有効な手段となります。
・復職に際する産業医の意見の必要性・重要度が高い
職場巡視や衛生委員会への参加を通して、企業の業務内容やコミュニケーション状況に対して十分な理解があれば、面談を通じて休職者の健康状態と業務内容を照らし合わせて判断できます。産業医の意見からは復職できるかどうかの見解を得やすいといえるでしょう。
健康状態の理解度が高い主治医と、業務内容の理解度が高い産業医双方の見解があることで、企業は復職可否の判断がしやすくなります。
また、厚生労働省による「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の中では以下のように記されており、産業医の意見の必要性や重要度の高さをうかがい知ることもできます。
主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限りません。このため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等が精査した上で採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要です。
引用:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
産業医が行うメンタルヘルス対策
産業医が行うメンタルヘルス対策には、主に以下のようなものがあります。
- ストレスチェックの実施と結果に基づく面談・保健指導
- 長時間労働者への面談・保健指導
- 復職後のフォロー面談、健康相談、保健指導
- 就業上の配慮やメンタルヘルス対策に関する意見
産業医が行う対策を把握し、企業と産業医が連携してメンタルヘルス対策をしていくことで不調者の早期発見や職場環境の改善が見込めるでしょう。ここからは、産業医が行うメンタルヘルス対策について詳しく紹介していきます。
ストレスチェックの実施と結果に基づく面談・保健指導
産業医は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐこと、従業員自身にストレスへの気付きやセルフケアのきっかけを与えること、職場環境の改善を目的にストレスチェックを実施します。そして、結果によって必要な従業員と面談を行い、内容により企業に対して業務内容や職場環境の改善指導を行います。
企業はストレスチェックや面談を実施後、労働基準監督署へ結果の報告が必要です。報告漏れが起きないよう注意しましょう。
長時間労働者への面談・保健指導
時間外業務や休日出勤が月80時間を超える従業員がいる場合には、産業医や医師との面談が労働安全衛生法によって義務付けられています。長時間労働はメンタルヘルス不調だけでなく、脳や心臓疾患の危険が増すなど、従業員の健康に関してあらゆる面で悪影響を及ぼします。
長時間労働の従業員がいる場合、企業側からリストを産業医に渡して面談申出を勧奨することが可能です。面談の義務は月間80時間以上の時間外労働ですが、時間外労働(休日労働は含まない)の上限は原則として、月45時間となっています。
従業員の労働時間管理とともに、産業医と連携して面談を実施して必要に応じた対策を講じていくことで、長時間労働に対するメンタルヘルス対策が実現しやすくなるでしょう。
参考:労務安全情報センター「18年改正労働安全衛生法 過重労働による健康障害防止及びメンタルヘルスの対策」
復職後のフォロー面談、健康相談、保健指導
産業医面談は従業員から申し出があった場合にも実施可能です。メンタルヘルス対策の他にも、産業医は健康診断後の就労判定を通じて従業員の健康維持を実現する役割もあります。しかし、従業員が産業医について理解が不十分な企業では、不安があっても面談を申し出ることは少ないでしょう。
メンタルヘルス対策を実施する上では、従業員に対して産業医の理解を深めることに加えて、メンタルヘルスや健康面で不安がある際には、気軽に面談の申請をしてよいことを周知しておくことが重要です。
就業上の配慮やメンタルヘルス対策に関する意見
産業医は、面談や職場巡視の結果によって以下のような意見を企業側に提示することがあります。
- 労働時間の制限
- 部署の異動や就業場所の変更
- 労働負荷の制限
メンタルヘルス不調の原因が上記のような労働環境の場合、企業側に改善を求める内容となります。最終的な決断は企業側にありますが、産業医の意見を尊重することは従業員を守ることに加えて、コンプライアンス遵守のためにも重要です。
テレワークの増加に伴って、テレワークならではのメンタルヘルス問題も浮上してきました。産業医面談をリモートで実施する企業や、テレワークにおけるメンタルヘルス対策の相談を産業医にする企業も増えています。
まとめ
メンタルヘルス不調を早期発見するために、産業医と連携して面談をしやすい職場環境を整えていくことも重要です。労働時間や業務内容など職場環境の改善はもちろん大切ですが、従業員が感じていることや悩みは目には見えません。どれだけよい環境になったとしても、何かしら悩みを抱える方は生まれてくるでしょう。
医学的視点から不調者の発見と改善のアドバイスができる産業医は、メンタルヘルス対策をしたい企業にとって重要な存在です。産業医がいない場合は、産業医を紹介するサービスに相談してみるとよいでしょう。